稜線に出た辺りで突然の吹雪に襲われた。
この時期に吹雪くのは稀にあることだ。
予報では天候は芳しくないことは想定していたが思ったよりも厳しい。
来た道を戻るには前進しすぎている。
目標地点の山小屋まであと少し。どうするか。
このまま体力を削って前進したとしても鈍足になったペースでは陽が沈んてしまう。
今日の行程をクリアできていない事に後悔を感じたが現段階で無駄に動き回るのは何よりも危険と判断し、ビバークを決意した。
稜線上にある木々の間の風雪を避けれそうな場所を探し、ザックの奥に押し込んだツェルトとストックで今日の野営地にした。
そうこうしているうちに辺りは吹雪く暗闇と化した。
お守りとして持ってきていたスキットルのウィスキーを飲む。
この吹雪も目覚めるころには吹き止むだろう。
携帯食をウィスキーで流し込むと体が温かくなってきた。
持ってきている装備に間違いはないので凍えてしまう事は無さそうだ。
稜線上に鳴りひびく不気味な風の音を聞きながら眠りに落ちる。
思った通り、夜明け前には空は晴れていた。
止まない吹雪はないし、必ず夜が明け陽が昇る。
計画していた山行の初日でこの有様だったが、まぁ、いい。
これからまた厳しい山行が始まるのだ。
この程度で狼狽えている場合ではない。
荷物をまとめ遅れた計画を取り戻すように歩みを進めた。
*注
一部過去の写真を再掲したフィクションである。
自粛生活でインスタグラマー共が家キャン、庭キャンなどとヌルイ事をやっている有様に辟易して『家ビバーク』を敢行した。