幼少の頃より眺めていた福智山。
奥にある山でとんがっているのがそれだ。
久々の遠征という事でこの福智山に足を運ぶことにした。
生まれ故郷を見下ろすようにそびえる福智山山系。
その主峰で最高峰の福智山山頂を目指す。
九州百名山に名を連ねる山の一つで、地元の人々からも愛されており、東西南北複数の登山道があり、北は皿倉山から南は牛斬山までの山系を縦走する登山道も備えている。
今回は実家から一番近い登山口、上野登山道からの周回コースを辿る。
駐車場も大小多くあり、到着した時点で複数の車がすでに止まっており、登山スタイルの人が幾人も登山口を通過する姿を見かけた。
まずは白糸の滝から。
登山口を過ぎて10分ほど歩いたところで落差25mの巨大な滝が姿を現した。
観光客なのか、登山ではなさそうなお客さんも滝を見学に来ていた。
白糸の滝の明王の横から本格的な山道へと変わる。
うっそうとした森の中を進む。踏み跡は明確だが、登山道全体を通して急登の連続。
ここ最近はウエストポーチだけの登山だったこともあって久々に背負う重いザックが拍車をかけて体力を削ぐ。
緑は鮮やかで、大きく息を吸い込むとほのかに杉の薫りがした。
森は春へと姿を変えている。
尾根に入っても続く急登。
なかなかしんどいぞ。
八合目付近。樹林帯から抜け大きなケルンがそびえる。
八丁峠と言われる場所でここからは展望が良く、目の前には福智山山頂を望む事が出来る。
新緑真っ盛り、まではあと一息だったか。
青空がまぶしい。
山頂まであともう少し。
山頂には大岩が点在しており、その周りは笹で覆われている草原。
今まで長いこと樹林帯を歩いていたのでこの様変わりが新鮮に感じる。
お社を参拝し、山頂までの最後の道を登る。
福智山山頂へ到着。
春風か南西からの風が強く吹き付けている。
山頂から少し下った広場の岩陰に隠れて昼食。
九州と言えばうまかっちゃん。おにぎりはもちろん明太子だ。
平日というのにたくさんの登山客が訪れていた。
俺と同じように岩陰に隠れて昼食をとっている人、山頂で記念撮影をしている人。
春休みという事もあってか、子供を連れた家族連れが多かった。
上野峡からのルートは急登続きだったが、反対側からのルートは比較的穏やかっぽかったので、子供でも登れるのだろう。
他にも頻繁に登ってきているような年配の登山客などいて盛り上がっていた。
なるほど、山麓にたくさんの駐車場があるわけだ。
昼食後、コーヒー片手に山頂からの風景を楽しむ。
岩ではしゃぐ子供たち。
越えてきた八丁峠。
今回立ち寄ることは無かったが、地元有志で建設された山小屋もあるようだ。
地元の方角を見てみたが、春の霞で遠くまでは見通せなかった。
澄んだ時だと、北九州全域が見えるはずだ。
下山は周回コースになっている上野峡ルートを辿る。
勾配は八丁越えと比べるとだいぶ緩やかで、こちらの方が登り下りしやすい感じだ。
ガイドブックだと東側からの鱒淵ルートの方が、この山の魅力を楽しめる名コースとあったが、あえて反対側である上野峡コースを登ったのには一つの目的があった。
この地域で名所となっている『虎尾桜』をみることだ。
下山ルートの道中で分岐がありその場所を訪れることが出来る。
駐車場付近のソメイヨシノは咲き始めくらいだったので、期待薄。
幾分か九州の方が開花が早いので咲き具合はいってみないとわからない。
山道を進むと暗い森の奥から鮮やかに染まる色が見えた。
これは!!
なんと満開。
森の中に一本だけ佇む桜。
品種はエドヒガンという品種の桜だそうだ。
樹齢は600年。高さ17m、幹回り3.8mの巨木。
一度朽ちかけていたものを地元の方が手入れし復活したという。
あちこちワイヤーで吊られ、下から棒で支えられているような有様だったが、地元の方の努力で何とか今でも花を咲かせることが出来ているのだ。
老骨ということもあり幹回りも痛々しいところがあったが自然の力強さを見て取れたように思える。
この時期は県内外からこの『虎尾桜』目当てにたくさんの人が訪れるそうだ。
常連さんと思しき人の話だと、見事に最盛期とのこと。
時季が遅くなると真っ白になるらしい。今年は早いそうだ。
ピンクに染まる今が一番の見頃で、ピークの時期になると駐車場は車が止めることが出来ないくらいの状況になるらしい。
いいタイミングに出逢えたな。
600年頑張って生きて来たんだ。
老骨に鞭打つかもしれないが、立派な姿を多くの人に見てもらってもいいんじゃない?
虎尾桜を後にし、静かな樹林帯を抜け元来た道へと下山した。
往路:上野峡八丁越え 1時間30分
復路:上野越え 1時間30分
八丁越えは急登が続きなかなかしんどいコース。入り口に白糸の滝があるので滝好きには外しがたいルートではある。
八丁を越える直前でススキと笹の展望の良いコースへと変わる。
ここまで来たら山頂までは目前だ。
山頂は360度の大パノラマ。今回は春序盤だったが、春真っ盛りになると山頂一帯はヤマツツジに覆われるらしい。
今回は桜狙いだったので、タイミング的には丁度良かった。
もう少し季節が進んだ時に、緑や花にあふれかえる山頂を訪れてみたい。
天気は良くとも、霞んで展望も遠く望めず良くなかったしね。
こうなると気になるのは東側からの鱒淵コースだろうか。
ガイドブックには福智山を堪能できるとまで書かれてあったしねぇ。
帰りの上野越えルートは、道も広く傾斜急登もなかったので無難なルートと思う。ここまで来たので、となりの鷹取山まで縦走しても良かったかもしれない。
眼下に望む鷹取山山頂は展望が良さそうだったので福智山全景を臨めただろう。
ルートも多く、見どころが点在している上、山頂からの展望も良い。
登山客が多く賑わい、人気の山になる理由は揃っている。
常連さんに隣町の出身であり、初めてこの山に登った事を告げると、「惜しい事をしたねぇ。近場にこんないい山があるのに。」と茶化された。
故郷の山がこんなにいい山とはつゆ知らず。
登山を趣味にしなかったら気付かなかったかもね。
我が故郷を見下ろす山、福智山。
足しげく通いたい良い山だ。