蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

山行記 霊峰 石鎚山 ②


長い長い木の階段を進むと、展望がひらけた。
『夜明峠』だ。標高は1600mを越えている。
ここくらいから木々の背が低くなり、周囲の状況が良く見渡せるであろうが、濃いガスに覆われてしまっている。
登山開始の時に山頂は見えていたんだけどなぁ。
鎖場を通りたいので、まだ雨が降ったりしていないのは幸いな方だろう。
そして、ここからが本番になる鎖場。『一の鎖』が始まる。

長い!強烈なまでに長い!!
同じ道を辿っていた二人組の男性も『こりゃぁ長いなぁ』と絶句していたが、試しの鎖を通過していることと、『やっぱり、ここは登ってみよう』という事で登り始めた。

鎖は四本あり、片方の二組は登り用、もう片方の二組は下り用となっていたが、鎖場をあえて下る強者なんているんだろうか?
一応、登った後に降り返さないといけないという訳ではないので、体力一辺倒でひたすら登る。

鎖場の最終ポイントから下界を望むと、先ほど通ってきた道が見えた。
雲に遮られイマイチ展望が無いのだが、ある意味高度感が少ないので感じる恐怖は少なかったのかもしれない。
鎖の起点はかなり頑強に固定されているようだし、そうそう簡単に千切れるような鎖ではないので本気で掴んでも問題なさそうではあるが、一体いつの時代からかけられているのか?そもそもどうやってこんな長大で重い鎖をここに掛けたのか、不思議で仕方ない。
そんなことを想いながら、再び山頂への歩みを進める。

時折、ガスの間から物々しい山容が現れる。
土小屋からのルート合流点に到着。


地図で見る限りだと、この土小屋ルートも景観的に面白そうな雰囲気だった。
登山口までは大きく迂回しないといけない事と、初めての石鎚山という事もあって表参道のルートを辿ったが、次回はここから進んでも面白いかもしれない。

合流地点は綺麗な避難小屋が建設されており、トイレも併設されていた。
どうやらここ最近になって建てられたもののようだ。
そしてこの裏手に第二の鎖場『二の鎖』が待ち構えている。


傾斜はきつくは無いものの、びっくりするほど長い。
ガイドブックでは65mはあるとの事で、かなりの登り堪えがあった。

あー、展望が開けていたらなぁ・・・。かなりの絶景を愉しめただろうに。
そしてほどなくして。

遥か彼方の岩肌に取りつく人影。
あれが山頂に直結している最後の鎖場、『三の鎖』だ。

三の鎖の始点となる場所に立つと・・・。先が全く見えねぇ。
でも、ここまで来たら恐れるものもないので、勢いに任せて登る。

途中休憩ポイントもないし、下から登ってくる人もいるので、一気に登る。
長い長い。きっと快晴だったら高度感に怖気づいていたかもしれないくらい。

登った先には『石鎚神社』が祭られていた。
そして、時折晴れる霧の向こうには・・・。

あの頂点が最終目的地。西日本最高点の『天狗岳』だ。

およそ日本とは思えない広大な風景を望みながら、最高点を目指す。

ナイフの様に切り立った尾根を進み。

最高点1982mへ到着。
遮るものが無い最高点だが、今回は東側のみが展望に恵まれていた。
最高点は停滞できる場所が無いので一度石鎚神社付近の広場まで後退。
西側に見える二ノ森を展望しながら昼食。


山頂には社務所や山荘もあり、ここだけで見るとおよそ山頂とは思えない雰囲気だった。
山頂の石鎚山看板の前で、追いつき追い越されを繰り返した同年代二人組の男性と記念写真をお互い取り合った。
「何だかんだで、結局鎖場を通って来たね」
「男の子だから、アドベンチャー大事っしょ!」


山荘でも食事が出来たりするようだったが、久々に火を熾してラーメンをすする。
気温も20度程度しかなく、ラーメンをすするには丁度良い気温だった。

もう少し展望が開ければと思ったが、やはり夏場の午後はガスに覆われやすいようだ。
山頂の社務所で記念にお守りを購入。

鎖場を通らない巻道を通り下山を開始する。
辺りは濃い霧で覆われていた。
振り返って展望が開けないかと何度も立ち止まったが、ついにはその山容をあらわすことは無かった。

八丁鞍部に到着した時にはすっかりと霧が晴れ、暑い夏の日差しが飛び込んできた。

そのまま成就神社へ下山のお参りを済ませ、周辺の店でかき氷をほおばる。

暑くなっていた体を冷ますには丁度良い按配だった。

なごり惜しい思いもありながら下りのロープウェイに乗り込み下界へ帰る。


非常に長い道のりだったが、今までの山行の中で一番楽しめたかもしれない。
『写真撮影』という観点では消化不良があるが、こればかりは自然相手だ。
きっと次に見るこの場での風景は素晴らしいものになるだろうと想い、当地を後にした。

しまなみ海道を通り、本州へ。



表参道成就神社ルート
往路:3時間15分
復路:1時間55分


四国の山並みは素晴らしいの一言に尽きる。
特に中国地方の山しか経験のない俺にとってはかなりエキサイティングな山行になったと想う。
標高も高くそして広大。
近隣の山々を縦走することも可能なようだが、丁寧に一つ一つの山を登っていくのも面白そう。
(そもそも縦走するにしても装備も技術も無いのだが)
標高が1800m近い山並みが並んでいることもあり、写真屋としては風景写真に本腰を入れてみたいと想わせるところが多い。

時折見せる山頂からの風景が非常に幻想的で美しかった。
ラカンさんが何故この石鎚山を含め四国地方の山域を薦めてきたのかなんとなく解る気がする。

時期を改めて再び石鎚山に足を運んでみたいと思ったし、他の山々も訪れてみたいとついつい欲が出てしまう。
次回足を運ぶときは、土小屋からのルートを利用してみたい。


『山岳写真』というと大それているが『山並み』を題材とした写真撮影を模索中。
しかしながら未だ決定打に欠ける。何が欠けているだろうか?満足のいく結果を出せていない。
まだまだ、眼で、肌で、空気で感じたあの風景を切り取ることが出来ていない。
どうやったら情景を捉えれるだろうか?
山の登攀技術、そして撮影技術にまだ多くの課題を残している。