「やっぱメッキパーツの多いW650はピカピカじゃないと。」
と山本モータースのメカニックO田さんは話す。
残念なことに、ほったらかしのW650のメッキには錆が浮いて何とも酷い有様だった。とくに一番目立つエンジンガードが錆だらけなのがより一層W650の美しさのステータスを下げているようだった。
未だに嫁さんがバイクを磨いているところを見たことがない。
「馬鹿野郎め。あのピカピカなのがステータスなのよ。全然だめじゃん。一度錆付いたメッキはもうダメよ~。ダメダメ!」
もういっそ、マットブラックに染め上げてセパレートハンドルにしてロケットカウルをつけてカフェレーサースタイルに!と想ったのだが、(嫁さんが反対するし)なんとか「一度錆付いたメッキはダメという運命を変えてみる!」ということで、磨き上げることにした。
メッキってそもそも錆びないのでは?
いやいや、手入れをしないと錆びるんだよね。
鏡面光沢を出す装飾メッキは一般的にクロムという硬質の金属をコーティングしている。
ただ、このクロムメッキには目では見えない小さな孔があり、堆積した汚れやほこりが影響してこの小さな穴に水分が浸透し、地金に到達して錆になる。
それがメッキの表面に現れてくるというメカニズムだ。
けっしてクロムメッキ自体が酸化して錆びているという事ではない。その下の地金部分が錆びて表に出てしまい、錆が発生しているように見えるのだ。
それにメッキ表面も1μm~5μmと非常に薄いので気を抜くとあっさりと錆びてしまうのだろう。
いや、ひどいな。
錆落しをどうするか。
ちょっとインターネットを調べると面白い記事を見つけた。
それが、クレンザーとたわしでひたすら磨くという内容だった。
ここまで酷い錆ではなく、ピンホールのように僅かに浮いた錆をクレンザーで磨くことで錆を落としていたので、今回酷い錆になっている箇所でやってみる価値があると考えた。なによりもコストパフォーマンスが優れている。
クレンザーとたわしで300円を切る値段だ。
クレンザーには研磨剤が含まれており、下手に磨くと傷だらけになるのではないかと心配があるが、基本的に物質の硬さはこんな感じで考えている。
クロムメッキ>クレンザーの研磨剤>錆(鉄)
つまりクレンザーに含まれる研磨剤は硬度の高いクロムメッキに傷をつけるほど固くは無いが、錆(鉄)より固いので錆は削ることが出来る、という考えだ。
あくまで錆はクロムメッキの目に見えない小さな穴から噴出しクロムメッキの上に錆が広がっているという状況なのだから、その錆を落とすと下からクロムメッキが現われるという仮定。当然、クレンザーではクロムメッキに傷をつけれないので本来の鏡面のような輝きは維持できるはずだ。
嫁さんはビンテージと言い張っているが、ビンテージというのは古いというだけでこんな錆びて汚いという意味ではないと思っている。
やってやるぜ!こんちくしょう!
いや~、はっきり言って「メッキの上に錆が付着している」という仮説が揺らぐ気分。これメッキ剥げて地金が露出してるだけじゃないの?
いざ実践!!
錆部にクレンザーを塗布し、たわしで磨く。ひたすら磨く。
そしてドバドバクレンザーを使って磨く!白い泡が茶色くなってきた!
ピンホール状の錆はこれであっさりと錆が流れ落ちる。
が、あのエンジンガード下部の一面錆になっている場所はなかなか落ちない。
ちょっと試しに、たわしについている金属製のわっかで錆部分をひっかいてみると!なんと錆が落ちた!!ちょっと硬めのブラシでもいいみたい。
金属のわっかの部分を軽く当ててガリガリやると、かさぶたのように錆が落ちていく!
どうも錆の層が厚かっただけの様子。
ちょっと手の汚れがひどかったのでブラッシングしているところの写真は撮らず。
磨き終えて!!
磨きに磨き上げてみた!
エンジンガードの側面部分。
ミラー部分。
そして問題のエンジンガードで一番錆が酷かった下部は・・・。
錆は取れた!!そしてクロムメッキの鏡面は維持できている。
が、あまりに錆が酷いとクロムメッキの表面も傷んでいて鏡面のような輝きは戻らない部分が。これ以上固いブラシや研磨剤を使用すると非常に薄いクロムメッキをはがしてしまう可能性がある為、これくらいでやめておいた。
結論!
一定の効果あり。僅かな錆はクレンザーで簡単に落ちる。
ダメージを考慮して柔らかいたわしを使ったが、錆取り効果のより高い真鍮製の柔らか目ワイヤブラシなんかでもいいかも。
まぁ、メッキに傷が入るのが怖いので繊維系のブラシが無難だろうな。
あまりにも錆が酷いとメッキが傷んでいるので、新品時の鏡面光沢は再現できない。
クロムメッキの微細な穴から水分が侵入し、錆となって表面に出てくるというメカニズムで、メッキが錆びたように見えるだけという仮説は正しかった。
メッキそのものが錆びているわけではない。
だが、言い換えればメッキの下にある地金部分まで水分が侵入してきたことになるので地金部分のダメージは治ったとは言えない。
特に今回のようにあまりにひどい錆の場合はクロムメッキもデコボコしているし、恐らくその下の地金部分もダメージが解消されてはいないはずだ。
メッキ部分は錆びる前に埃や汚れを綺麗にしてワックスをかけるなどの手入れをこまめにしてやるのが一番の錆対策になるだろう。
埃・汚れ付着→埃・汚れに水分が集まる→クロムメッキの隙間に浸透→錆発生
という流れだ。やっぱりこまめに磨いてないとダメ。
あくまでも金属に施されているメッキパーツでは効果があった。
プラのメッキにも汚れのような錆のような何かが付着して、なかなか落ち無かったので、軽くクレンザーを塗布して磨いたら同様にピカピカになったが、あまりやり過ぎると鏡面がくすんでしまいそうだったので、手加減は必要そうだ。
ずっと外に置きっぱなしだったし、動かしていなかったしなぁ。
とりあえず、エンジンガード以外のメッキ部分で錆が浮いているところはすべてクレンザーとたわしで磨き上げたら、それなりに見れる姿になったぜ!
1M離れてみれば新品同様に見える。
微妙に残っている錆部分は今後こまめに手入れして綺麗に仕上げていくつもり。
やっぱりメッキパーツはこうでなくっちゃ。
一応梅雨明けにはバイク屋に持って行って車検その他整備をお願いすることになっている。バイクカバーをかけているとはいえ梅雨時期なのでまた錆びてしまうのを防ぐため、メッキ部分には防錆処理としてシリコンスプレーを吹きかけておいた。
O田さん!!運命に逆らったぜ!!
W650復活への道の続編はO田さんに頼みます!!(笑)