「大ちゃん、彼女いないの？だっせぇ。」
キャンプイベントで俺のテントの周りをうろちょろする小学生の小娘にそう言われた。
「んじゃぁ。俺の彼女になってよ」
「えー・・・。年離れているから無理かな？」
むむっ。あっさり振られたぞ・・・。
革細工の師匠であり、これまでのキャンプ生活への入口へ導いてくれた恩人の娘さんで、キャンプイベントで出逢う事が多く、よく行動を共にしていた。
女の子という事もあってか何かと達者で、朝にテントまで起こしに来てくれたり、イベントで一緒に食事したりと短いながらも過ごした時間はいい思い出である。
そんな彼女は成長し進学するにつれ疎遠になっていた。
思春期真っ只中、年頃の娘が両親と共に行動し、ましてやキャンプなどとはナンセンスな話だろう。
俺も通って来た道だ。
ところが先日のキャンプの時に、ばったりと再会することになった。
何とまぁ、綺麗なお姉さんになって。
なんでも今年就職試験らしい。
生意気な小娘が立派になっている姿を見て、『俺も老けるわ』とついつい思ってしまう。
親元を離れる覚悟の就職試験。
遠巻きながらエールを送りたい。
キャンプ撤収の別れ際、再開を約束し握手を交わした。
見下ろしていたはずの彼女の目線の高さが同じだった。
『LIFE IS TRAVEL』
人生は旅と同じ。
出逢いもあれば別れもある。
良いこともあれば悪いこともある。
一期一会で終わることもあれば、時として再会をすることも。
願わくば、また逢えることを。
自らの意志で歩みを進めることこそ旅で、人生なのだと想う。
今度逢ったときは酒でも呑み交わしましょう。
