蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

黄昏の故郷

里帰りをしたときに、久々に近所を散歩した。
普段里帰りをしても、特に近所を出歩くこともなく、近くにできた大型ショッピングモールに立ち寄ってみたり、すぐに何処かへ遊びに出かけたりと過ごしていた。
実家でごろごろしても暇だったのでふと思い立ち、小中と9年間使った道を辿る。
俺が子供の時、同年代の子たちでこの地域はあふれていたが、今は同じように成人し皆何処かへ行ってしまったそうだ。


当時、子供たちで賑わっていた夕暮れ前の公園や道路は閑散としている。



線路の下を行くトンネル。大きくて不気味だったが、今となっては軽自動車も通れないほど低いということに気付いた。当時は落書きがされてあったり、地元の不良高校生が集まって、シンナー遊びやらをしていたなぁ・・・。「ヤバいから近寄るな」って、同年代では噂になっていた。

家のすぐ近くを通る私鉄も、一昔と比べ本数が減っているそうだ。
小学生の時に、新型と言われた『白電車』もどことなくその白さに陰りが見える。
発車する前に『チンチン』という音は、昔のままだった。

『悪書追放』なんて書かれてあったが、『悪書』とはいったいどんな本なのか?
警察まで絡んできているのは一目瞭然で、かなりの『悪』なのだ。
そう思っていたが、今振り返ると『悪書』に結構お世話になってたぞ。


個人経営のコンビニで、中に入ると其処にはいまだに一つ30円とかの駄菓子が売ってあった。
店内も、昔の名残がある。まだ、この空気は小遣い片手に通っていた時と同じだった。
『あんた、どこの子ね。』
懐かしくも老けてしまったおばちゃんが声をかけてくれた。
『ああー、あの家の子か・・・。もう名前を言ってもらわんとわからんわ。』
店の雰囲気もおばさんも元気で何よりだ。
30円で買ったチョコバーをかじりながらまた歩き出す。

この橋を9年間渡り、通った。
橋の上から見る景色はそれなりの時間が経過したんだな、と思わせるほど変わっていた。
橋の向こうにはスーパーはなかったし、背の高いマンションもなかった。
遠くに見える野原の丘も開発され、新しい家が軒を連ねていた。
小学校の時に一緒に遊んだ双子が住む家もいまや人の気配がなく、表札が外され廃屋になっていたのは少しショックだった。

黄昏が故郷を包む。


閑散としているのは、この日が休日の夕暮れ時だからだろうか?



どことなく浦島太郎になったような気分。



河川敷のこの木は、今も其処にあった。



君はまだ、昔のままかい?