蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

日蝕

月ではない。
太陽だ。
静かに、静かに、
太陽が欠けていった。
本来あるべき太陽が、静かにかけていった。
部分日蝕ではあったが、
日差しは弱く、
あたりは薄暗く、
太陽の本来のエネルギーより遥かに劣っている。
この現象に、
俺の体は身震いした。
不気味に、静かに欠けてゆく。
現代では皆、太陽が月に隠れるという理論を理解している。
だが俺は身震いした。
太古の人々はこの自然現象を目の当たりにしたら、きっと、この世の終わりが訪れたと確実に思ったに違いない。
月と…
太陽と…
地球…
その微妙な位置関係…
この、これほど巨大な物体が並んだ時に初めて起こる現象。
これこそ、自然の中の奇跡なのだ。
俺はこの奇跡に酔いしれた。