蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

山行記 伯耆大山 三の沢遡行


この道を先を進めば何があるのか?
ピークハントに拘りはない。ただこの先にある風景を見てみたい。
あの断崖の麓へ・・・。

夜明けとともに伯耆大山山頂へ向かい、一息入れて下山した。
途中、登ってくる登山客に『え?今の時間から下山?いつから登っているの?』と、驚かれたりもしたが、我ながら下山した時刻は意外にも早く昼前だった。
自宅から片道4時間。このまま同じ時間を使って帰宅するのはなんだかもったいない気がしたので、伯耆大山の登山を計画したときからずっと気になっていた場所に足を運んだ。

『三の沢』。
沢と言いつつ水は流れておらず、崩落が沢を形成し、現在では数多くの砂防ダムが建設されている大きな沢だ。
今も砂防ダムの増設で建設重機が仕事をしているが、その横を縫うように登山道が存在している。

緩やかな傾斜。
踏み跡を辿り森に分け入る。

時に枯れ沢を渡河し、時に次々と現れる砂防ダムを踏破していく。

最後の大きな砂防ダム。そこをロープを伝って登りきるとケルンがこの道の正解を示す。
そしてそこに見えていた風景は・・・。

目前に伯耆大山の南壁がそびえたつ。
なんとも荘厳な雰囲気。ここにこんな風景があったとは・・・。

あの切り立った尾根までのルートはあるようだったが、おそらく今の時間帯から登ると帰りがとてもきついので、いったんのゴールを麓の核心部入り口までとし、ひたすらガレた道を進む。
あまりにも風景が大きいため、近いようで遠い。
行けども行けどもあの景色と自分の距離が縮まらない。


途中、尾根から降りてきた登山客一行と出会い、この先の尾根の状態やルートについて色々と教えてもらった。
「時間的に尾根に上がるのは無理かもね。でもあなた私の子供より若いからいつでも行けるわよ。」
「無理はしないっス。この風景を見れただけで今日は十分だから、とりあえず麓がゴールっス。」
6月の中旬にも関わらず、麓の谷間には僅かに残雪が残っていた。

雪渓の入り口で一休み。行動食を頬張りながら一人この荘厳な景色を楽しんだ。



今まで見てきた風景の中で一番スケールが大きく、ファインダー越しに映る風景も肉眼で見る風景も遠近感が狂ってしまい大きいのか近いのか、それとも遠いのかが分からなくなってきてしまうほどだった。
足元にはガレ石の間から顔を出す草花も。

いつか・・・。あの急峻な岩壁を登り尾根へ、そして剣の先へ・・・。
後ろ髪を引かれる思いでいっぱいだったが、弥山を登って疲れ切った身体と日没まで残り少ない時間を考えるとここまでだった。
『次にあの頂に登れた時は、今日登った時よりも格別な思いになるだろう。』
そう自分に言い聞かせこの地を後にした。


この時間になっても遡行してくる登山客がいたので、単純にこのビュースポットを望むだけでも価値がある場所だと思う。

最後に三の沢入り口の目印になっている文殊堂に参拝。
『倅が少しでも賢くなりますように・・・。』

三の沢から渓谷の始点まで:片道1時間15分
沢の傍らにある樹林帯を進み、砂防ダムを幾つも越える。
ガレ場が多く慣れていないと足を滑らす。
等高線の広さの通り緩やかな坂が沢の始点まで延々続く。
一見平坦な道を来たように見えるが、標高差は500m近くあることに驚いた。



文殊堂の裏手に駐車場がありそこに駐車。
工事用通路を使い進んでいくと登山道の標識
案内標識と踏み跡を頼りに渓谷の先端へ。
途中いくつもの砂防ダムが行く手を阻むが、左右どちらかに登山道が形成されているためルートは明確だ。ひたすらに沢を遡行するのでルートを見誤ることは無いだろう。

過去何度もこの沢の前を通っているのだが、沢の奥にこんなきれいな景色が存在しているとは思いもしなかった。
ただの旅行やバイクツーリングだけでは出会えなかった景色だろう。

三の沢を後にし、鍵掛峠へ。
ガイドブックに必ず載るビュースポットだ。
残念ながら霞んでしまいコントラストに欠ける画になってしまった。
何度来てもこの風景は雲で霞んでしまい、今回もイマイチな結果に終わってしまったが、三の沢で見た風景で写欲は満足感に満たされていたので良しとしよう。

そして帰路。
アミラーを覗くと大山が見えたので一枚記念撮影。
なるほど、東側からの見ると『伯耆富士』と言われるのは頷ける。