数ヶ月前、俺のアパートの庭先に蜘蛛の巣が出来た。
庭先を有効活用してない俺は、その蜘蛛の巣を崩す必要もなく、放置していた。
その蜘蛛はその場を気に入ったのか、それ以来ずっと同じ場所に立ち、今や住人と化した。
うちの軒下の柱から向かいの家の軒下の柱を渡る大きな蜘蛛の巣。直径でいうと1mはあろうか。
美しく緻密な幾何学模様の中心に主が居る。
風の日も、雨の日も、夜も、昼も。
ただそこに居る。
正直蜘蛛は苦手だ。
あの不気味な形相。長く複数ある足が不気味に動く。
幼少の頃から今なお、もっとも苦手とする昆虫の一つ。
(もともと昆虫は苦手なのだが)
だからと言って、ただそこに居るというだけで追い払うことはしなかった。
ふと、あることに気付いた。
「コイツはどのようにして巣をつくるのか?」
考えても、考えても思いつかない。
家の軒下の柱から向かいの家の軒下の柱まで1m。
どのようにして、まず一本目となる糸を渡したのか。
スパイダーマンのように糸を飛ばしたのか。
自ら飛んで糸を渡したのか。
糸を風にそよがせ渡したのか。
仲間を募って皆で作ったのか。
・・・あと、思い浮かぶことと言えば・・・。
謎は深まるばかり。
結構、苦労して作ったんだと想うね。
そういえば、うる覚えながらこんな迷信を聞いた事がある。
『蜘蛛の巣を壊すと、蜘蛛の呪いにかかり、目を患う』
苦労したんだから、恨みの一つや二つ想うのかもね。
それと、こんなことも聞いた事がある。
『蜘蛛の巣がある場所は安全な証拠』
確かに、環境の悪いところに家は建てんな。利にかなっている。
「糸の強度は同じ太さの鋼鉄の5倍、伸縮率はナイロンの2倍もある。鉛筆程度の太さの糸で作られた巣を用いれば、理論上は飛行機を受け止めることができるほどである。そのため、近年では人工的にクモの糸を生成する研究も行われている。」
(ウィキペディアより抜粋)
すげ。
家の庭先に、鋼鉄をも超える強度でなおかつナイロンよりも伸縮率がある糸で作られた網がかかっている。