最近写真撮影はおろか趣味に興じるようなことなんか、まともにしてないわ。
そろそろ写真のストックが無くなるな。
勤めている工場がリニューアル工事中で戦場の様相。
自分の業種が設備メンテナンス関係という事もあってこの大規模工事にかなり関わっていて、現在なかなか忙しい感じなのである。
俺は立場的にお客さんという状態だ。
設備メーカーが胴元で、その下に各種専門業種の職人や作業者が百人単位で工場の中を昼夜忙しく働いている。
その一角、工場の一部を撤去していく作業で、前段取りを設備を良く知っている俺が担当し、撤去を胴元である設備メーカーの年配のオジサンが一人と、その下請けの作業者5~6名で編成されたチームが請け負っている。
メーカーと違い作業服や装備に統一性が無くどういう関係なのかはイマイチ読み取れない。お互いをファーストネームやあだ名で呼び合っているのでただの寄せ集めではなさそうだ。
アメリカの戦争映画の定番で『お前、カリフォルニア訛りがあるな』的な感じで話がはじまる。
作業者同士の会話が北九弁(北九州地方の訛り)があり、北九州出身の俺は作業者の一人の恰幅のいいオッチャンに
「北九州の人ですか?」
と問いかけたら、
「そうです。よく解りましたね。」
と気さくに返してくれた。
「いや、俺も生まれが北九州でしてね。~っち。とか~っちゃ。っていう北九弁を使っているので。」
「あ~やっぱ言葉違いますか。北九州の何処出身ですか。」
定番の出身話の始まり。
「北九州というよりは隣接の○○市の生まれで・・・。」
恰幅のいいオッチャンは驚いたように話し出す。
「え?うちの会社〇〇市の会社ですよ!自分の生れは隣の△△町で・・・。」
懐かしい町名だな。
「お!○○市と△△町を隔てたあの線路あのあたりが実家ですよ。奇遇ですね。」
自分の実家周辺の特徴を話すと、オッチャンが続けさまにさらにその周辺の特徴を話してくる。
「あの道沿いに中華屋があって寿司屋があって・・・。」
と懐かしいふるさとの通り。子供の頃を思い出した俺は、
「子供の頃の誕生日はそこの寿司屋から出前を取ってましたよ。隣の歯医者に通ってました。その先の理容室で散髪してましたよ。」
「あの黄色いオート三輪が飾ってある?」
「いやいや、あのオート三輪が飾ってある美容室は長男で実家は目の前の理容室なんすよ。」
ローカルすぎる話に花を咲かせる。世の中狭いねぇ。
地元が同じっていうだけで親近感沸くわ。
恰幅のいいオッチャンが、
「年はいくつなんですか。」
と話の流れで問いかけてくる。
「今年で39になります。」
・・・あれ。だよね。
39という年齢を口に出して、ちょっと心の中で『俺、年喰ってね?』と思ってしまった。
いや、割とガツンと来た。『若くなくね?』って。
そういや、俺の周り20代が多く、普段から一緒になって『エヴァの映画見た』とか『鬼滅おもろい』とか『チンコ』とか『ウンコ』とかでキャッキャして盛り上がっていて忘れていたんだけど、ハッと我に返ったわ。
『俺、39やん。』
恰幅のいいオッチャンが俺の齢を聞いて続けざまに言う。
「え?俺の3つ上じゃないですか!」
オッチャン悪気ないけど俺には追い打ちでしたな。
他の作業者の人、この恰幅のいいオッチャンにみんな敬語だったからみんな若いんだねぇ。
責任者の腕章をしている人に向かって
「社長!客さん〇〇市の生まれだってさ~!』
若いのに頑張ってるんだね~。
おっさんも頑張るぜぃ~。
そろそろここの一人称を『俺』から『ワシ』に替えねばならぬのかの~。