風が強く吹く抜ける。
空の雲を吹き飛ばしたが、その勢いのある風は木々やテントを嫌がらせのように揺らした。
こんなに風が強いキャンプは久しぶりだ。
それでも大雨になってぐちゃぐちゃになるのと比べるとだいぶましな方だろう。
火の粉が散るので焚火をしながらゆっくり過ごすのは無理かな。
嫁さん子供はとうの前に就寝。ケインも早朝から出立なので早めの就寝になったが、ドリーネの奥から聞こえる音が気になったので俺は寝ずにいた。
ドリーネの底はサウンドシステムが構築されておりトランスミュージックが流されていて、お酒を呑んで音楽を聴いている人たちでにぎわっていた。
秋吉台は思ったよりも辺鄙なところだ。
周りに市街地も民家もなく、特にキャンプ地となっている周辺だとその辺鄙さに拍車をかけたような場所。
そんな誰も寄りつかないような場所のさらに深部になるであろうドリーネの奥にレーザーが舞い、トランスミュージックが爆音で鳴らされている様子は、一種の非現実的風景を目の当たりにしたような感覚を覚える。
ドリーネの奥に蠢く不思議な空間。
お酒を呑みすぎていたら気分が悪くなったかもしれないな。
ひたすらDJが音楽を鳴らす。
一夜限りの出来事。
燃え盛る炎。
ドリーネの奥から響く。