普段、革細工は自宅の作業机の上で行う。
そもそも革細工なんぞ工房の外に出てやるもんじゃないと想ってるし。
とある酒の席で、HAIR WORKS ALIAのオーナー・軍曹が「うちに来て一品作ってもらいたいものがある」と言ってきた。
このALIAはいつも散髪の際にお世話になっている美容室だ。
酒の席で酔っていたとはいえ、結構本気な感じでお願いされた。
そんなこんなで散髪の際に詳細を聞き、改めて革細工をしにこの度お店へ伺うことになった。
普段使っている工具一式を持って行く。
初めての出張サービスだ。
というか、普段の製品製作では出張はする必要は無い。
美容室の一角を借り、早速製品製作を始める。
人のお店を借りて、革細工をやる。かなり斬新な雰囲気。
普段ロースタイルの作業机で作業しているのに、今日は立った状態で革細工。
革細工を『趣味』でやっていると言うだけで物珍しいのだろう。
多くの人は、財布を作ってくれだの、バックを作ってくれだの簡単に言ってくれる。
そんな中で、軍曹のオーダーはかなり意外なものだった。
しかも出張で。
で、出来たのがこれだ。
ヘアカラーのスケール。
ぶっ飛んでる・・・。
作る俺も俺だが、これを「革で作る」という軍曹の発想もぶっ飛んでる。
いいじゃん。面白いじゃん。
大事だと想う、そのこころ。
しかも、お店の雰囲気にぴったりのものが出来た。
自宅の工房でもっと時間をかけてアイディアを出せば、もっと良いものが出来たと思うがこれはこれでアリだ。
軍曹も喜んでくれているようだ。
いや、まぁ、ぶっ飛んでる。
何処をどう見てもカラースケールが革細工な美容室なんてないぜ。
カラースケールを初めて見た時は、ペラペラの紙製で酷く痛んでいた。
あまり見栄えがいいものではないのと、軍曹も革細工がとても好きな人だから、丁度作り変えてもらおうとなったみたいだ。
これ作るのに出張じゃないと出来ないよね。
いざ作ろうとしたときには元のカラースケールが俺の手元にないと正直出来ない。
大切な仕事道具を少しの間でも手放すわけにはいかないし、そんなことしていたら、カラーの仕事が出来ない。
彼はアマチュアの俺と違い、プロだ。
出張させていただきました。
ありがとうございます。
軍曹の革細工コレクションに俺の作品が一つ継ぎ足されました。
これがきっかけでカラーの仕事が増えるといいね。
かなりいい革を使っているから一生ものでっせ!
お客さんには是非見せびらかしてほしい。