定年後再雇用を受けて今は社内教育の担当になっている所謂、『老練のおやっさん』的な人物から、「革ジャンいるか?」と問われた。
ちょうど数時間ほどの社内教育を受けている最中の事である。
俺が新入り当時の上司に当たる人で、管理者というよりは現場の最前線で戦う強者のおっさんであった。当初はロンゲの金髪でロックなオジサン。
ロックバンドのイエローモンキー・ボーカル吉井和哉に似た風貌でピリリとした雰囲気の持ち主だった。
「お前バイクにも乗るし、革細工もやってるからきちんと手入れできるだろ。なんなら解いて革細工の材料にでもしたらいい。」
そう言っておもむろにロッカーに取りに行って数分。
ビンテージものの革ジャンを差し出してきた。
社内教育中での出来事だった。
少しかび臭く、たぶんタンスに永いこと仕舞い込んでいたんだろうと思われる一着。
着てみろと言われて羽織ってみると、ぴったりのサイズ。
「あげるよ。」
と言われ、恐れ多くも喜んで受け取った。
なんでも自分が20代のころから来ていた奴だそうで40年物。
1980年代の代物らしい。俺より年上か。
使い込んだ痕跡は所々にあって、きっと大切に来ていたんだろうな。
普段からもフレアのダメージジーンズと厳ついブーツを履いているロックな雰囲気の人だったので、着こなしていたんだろうというのが容易く想像がついた。
裾や袖も寄れたり、伸びたり、毛玉が出来たりしていないのでなかなか仕上がりは良いもののようだ。
バイカー向けで購入した革ジャンと比べると生地が薄いので、どちらかというとファッションアイテムとしてのジャケットだろう。
すでに革ジャンは2着持っているが、襟付きのブルゾンタイプは持っていなかったので被らずに良かった。生地も薄めで軽いので普段使いにも軽いツーリングにも丁度よさそうだ。
一先ず布団乾燥機の消臭モードで匂いを一掃して、クリーナーで磨いてメンテしてみよう。
大切に使わせてもらいます。
今使っている革ジャンもデットストック品で格安だったけど決してチープなつくりではなく、それなりに仕立てが良かったので、いい買い物したなと今でも想っている。
まだ10年も使ってないんだな。