夜。
雨も上がったことだし、久々にバイクに跨って走り出した。
目指したところは、行きなれた街。
ただ違うのは、暗い深夜。
工場地帯を縦断する橋を越える。
昔、ゲームでやった、FINAL FANTASYの世界。
それも、森に囲まれて妖精が現れるような世界観ではない。
やがておとずれる近未来、文明の限界を向かえたような風景。
これが、人が選んだ最後の幻想。
悪しき野望を打ち砕く為、帝都を目指し駆け抜ける。
不気味にそびえ立つ白い巨塔。
ストーリーではこの後に世界が崩壊するんだ。
帰り道。
気にはしていたのだが、燃料切れ。
虫の音が聞こえる闇夜に、俺の愛車「雷」のエンジン音が消えた。
隣町と思ってなめていた。
しかも、不運なことにリザーブに切り替えても燃料が行かずエンジンがかからない。
おまけにアイドリングを調整するノブが外れた。
「どうしょうもねぇなぁ。このポンコツが。」
さっきの帝都とは違いここは外灯のない真っ暗な世界。
アスファルトの一本道。
草木が生い茂り、虫の音が聞こえる。
空にはぼんやりと星空。
淀んだ空気。
そして、
四方を囲む野犬の声。
「そういえば、土地柄的にそんな場所だったなぁ。」
野犬の声が、不気味に近づいてくる。