蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

遺品

『IMPERIAL』

大破した愛車からエンブレムをもぎ取った。
このエンブレムは純正ではなく、あるエアロメーカーの商品名だった。
エアロをつけても、こっ恥ずかしい商品名のエンブレムまで取り付けるオーナーはなかなか居ない。
若気の至りか、当時の俺はそのエンブレムに強く惹かれ、直ぐに取り寄せてもらった。
そういうこともあってか、真紅の外装と純白のホイール、そしてこの『IMPERIAL』は俺のパーソナルマークであったし、『IMPERIAL』=『俺の車』という周知の事実が出来上がっていた。



リヤ側は追突された影響でトランクルームは醜くひしゃげ、車体のフレームが大きく曲がったせいで、左リヤドアはまともに開けれる状態ではなかった。
車体のフレームがここまで曲がっていると修理は・・・・。
リフトゲートも無残に潰されており、メーカーロゴもその衝撃で外れ紛失していたが、奇跡的にこのエンブレムたちは無傷のまま、取り付いたままであった。


車内に遺されたCD類や雑品と共に、このエンブレムをはがして、『遺品』として持ち帰った。
10年間共に走り抜けた多くの思い出を形として残していたかったのだ。
その思い出をこの俺の稚拙な文章で気安く語れるものではない。
望むなら、もっと美しい形で終わりたかった。




いつかこのエンブレムは日の目を見るだろう・・・。

そのいつの日かの為に・・・。