蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

山行記 宝満山 河原谷コース


平日の休み。
登山を始めて、初の九州への遠征だ。
目的は難所が滝。
福岡県太宰府市にある低山中腹にある滝で、厳冬期にあたる1月から2月に滝が凍りついた『氷瀑』を観れるという。
職場の後輩も1月中旬に単独で氷瀑を見ていることもあり、情報をもらって夜明け前から山口を出発した。
昭和の森というキャンプ施設から、難所が滝を経由し宝満山の山頂を目指す。

前回雪の深入山を経験している感覚から、この日の天気予報と前日までの気温状況から『氷瀑』が鑑賞できる可能性は限りなくゼロに近く、初めて登る九州の山でも堪能しようと腹をくくっていた。
なんでもこの『宝満山』は福岡県では一番人気の山と言われているそうだ。

今回の昭和の森から入るルートは浮石だらけの道。
今まで歩いてきた道と違い、『踏み跡』という痕跡でルートを辿ることは出来ないが、登山者が多い山であろうか、ガレ場が続く道のいたるところに大小さまざまに積み上げられたケルンが点在している。

上手い事積み上げていたのに感心した。

ゆるやかな坂だが、長く続くガレ場に苦戦を強いられた。


予想通り道中は積雪もなく、静かな森を一人歩く。
約1時間ほどそのような道を歩いていると、第一目標点の『難所が滝』に到着。

難所が滝とされている岩肌には雪解けの水が滴っている状態であった。
滝と言いつつも、その本性はただの岩壁。
雪解けの水が滴り凍るを繰り返して『氷瀑』となるそうだ。
てっきり普段目にするような滝が、寒さのあまりに凍るものと想っていたが、この滝はどうやらそういうものではないようだ。
凍っていないのなら滝の鑑賞でも、と想ってみた有様がこの状態だったので久々に残念な思いをした。
今年はもう見ることが出来ないだろう。
楽しみは来年にとっておこう。
マチュア写真家としては何としても手に入れたい画だ!
九州地方で見れるとは思いもしない、なかなか珍しい風景だろう。



タダの岩壁と化した難所が滝を後にして宝満山を目指す。


尾根に取りついた後、仏頂山を経由し宝満山山頂へ。


ちょっとした鎖場を攀じ登ったあと、大岩に刻まれた文字が出迎えてくれる。


宝満山山頂に到着。
山頂にはお社が立っている。


山頂に到着したところで辺りに霧がかかり、周囲の様子が全くうかがえなくなってきた。
山頂は大岩の上にあり、360度遮るものが無いので天候が良いとかなり展望が良いだろう。
眼下には福岡市の街並みが一望できるに違いないが、やはりここも自然相手。
こういう時もあるだろう。

お社の軒下でコーヒーを片手に小休止。数名の単独行の登山客が山頂に現れたが、右田ヶ岳のように山頂でのんびりすることもなく、通過して行った。
三郡山地と呼ばれており、宝満山から北側に仏頂山、頭巾山、三郡山とう縦走が出来るようで、健脚な人たちはこの山を起点に縦走を楽しんでいるようだ。
ルートも複数あり、展望も良い。人気の山である理由が良く解る。
休憩を開始して間もなく、霧が晴れるどころか雪が降ってきだした。

予報では冷え込むという事ではあったので、もう2〜3日冷え込みが続いていれば氷瀑が見えたかもしない。

昭和の森に続く『うさぎ道』のルートで下山。


下山途中で、雪はやみ切りも晴れてきた。道は踏み跡もあり良好。


下山した林道を歩いている最中に陽が照ったが、それもつかの間帰りの車では雨に降られた。

天候もさえず、若干の消化不良が否めないがこれも自然相手。
なかなか想うようにはならない。それも含めて野遊びなのだ。

往路:河谷原コース 1時間59分
復路:うさぎ道コース 1時間25分





後日談。


実はこの翌日(自分の山行日は24日)に職場の同僚2名が南側のルートで宝満山をめざし難所が滝を目指した。
同一日に3名も職場に欠員が出るのは問題だったし、俺がこの日に行くことを話題にしたら、たまたま休みを入れていた翌日に二人で行こうと決めたそうだ。
宝満山の情報を得ていたのはその同僚のうちの一人だったりした。
一応、そういう経緯から俺が斥候という形で、氷瀑の状態を報告してくれと言われていたので『氷瀑なし』の一文を電報で送るにとどめていた。
正直それ以上の情報はこの日の山行には無かったし、現地情報に対する質問も無かったのでその一文と『マジか〜(涙)』との返信のやりとりで終了した。


すると、翌日仕事の昼休憩に登山中の二人から電話がかかってきた。
南側のルートから宝満山をめざし山頂を経由後、難所が滝に到着。
こちらも昼休憩だというのだ。ただ、状況が違った。
俺が下山後に現れた寒波で、難所が滝は若干つららが出来ているそう。
そしてなにより積雪が20cm以上あり、ラッセルを強いられたという事なのだ。
アイゼンが無かったらまともに歩けなかった様子。
天候を判断し、アイゼンを装備していたようなので問題は無かったとの事。


一夜にしてこの豹変ぶり。
たかだか標高800m程度の低山でもこのような事が起きるから侮れない。
おしゃべりにも
氷瀑もなく、積雪もない。変哲もない低山。楽勝楽勝。』などとのたまっていなくて良かったなとつくづく思った。
同僚二人らからしたら『氷瀑なし』の一文で終わらせられて、何ともそっけない報告だと思われたかもしれないが、ある意味余計な情報を入れてしまったら小さな親切大きなお世話になった可能性はなくはない。(同僚二人の実力なら天候から判断はしただろうが・・・。)



いかに適切な情報を収集し判断するか。
体力自慢一辺倒では登山は出来ない。