蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

写真教室

仕事中に一本の電話がかかってきた。
会社の組合で代表をしている人からの電話で、
「おまえ、たしかカメラをやっているだろ」
と、仕事とは全く関係の無いところから話がはじまる。


なんでも、組合主催の『やる気応援プロジェクト』なる企画で写真教室が開催されるそうだ。
ライフワークバランスがどうとかで、俺たち組合員に充実した生活を送ってもらうとかなんとかで、生活や趣味に役に立ちそうなイベントや教室をこのプロジェクトで開催している。


「先生を呼んでいるのに誰も募集が来ない。さすがにこれは体裁が悪いので参加してもらえないか」


・・・とんだプロジェクトだ。



正直、たまの休みにもかかわらず、会場となっている会社に向かわないといけないのには抵抗があった。
とはいえ、無料でプロの写真家から色々とお話を聞ける珍しい機会なので、出向いてみることにした。

講師として遠路はるばる東京から来ていただいた中川カンゴロー氏。
とても気さくで温厚な方で、「写真をどのように撮るか」という技術的なところも踏まえ、尚且つ「いかに楽しむか」を重点的に教えてくださった。

写真を始めた頃に「先生」と呼ばれているような厳つい初老の写真家とお話することがあった。
「色は濃く、前から後ろまでキッチリとピントを合わせ、構図はこのようにする!!」
なんだか凝り固まった撮影手法だとその時直感的に感じた。
老後の趣味と嗜んでいる方々は年金で高いカメラとレンズを購入し、こういう教えのもと、風景=写真、写真=風景と切磋琢磨、楽しんでおられるようだった。
ある意味アリだが、若かった当時の俺はその柔軟性と幅の無さについていけず、
「そんなんで撮影したら皆同じじゃない?」と思い、深くは付き合うことは無かった。



「写真の面白みはもっと別に在る。当たり前に見える綺麗な風景を当たり前に綺麗に撮るだけが全てではないっ!今の俺は、こんなことをやっているようだと直ぐに飽きてしまうぜっ!」



飽きずに今もカメラを構えているのは、若い俺がそう感じたお陰なのかもしれない。


後からギャラリーのオーナーから聞いた話だと、どうも山口と言うところは土地柄か保守的で凝り固まっているらしい。ギャラリーはいつも風景画ばかりだった。



中川氏はそんなことよりも、ほんのちょっとの撮影技法で写真撮影の楽しさが広がる教え方だった。
他の参加者(俺も含め5名ほどだった)はカメラを手にして1年から2年ほど。
大半は新型のエントリーモデルを携えていた。
1世代前の傷だらけのカメラは俺くらい。
話を聞いているとどうもカメラの設定はプログラムオートで何もかも全てカメラ任せ。
それだとカメラって、全然面白くないんだよね。
講義の内容はほとんど外に出て撮影。そしてその「全てカメラ任せ」からの脱却だった。





絞り優先モードでのぼかしての撮影。
シャッター優先モードでの流し撮り
人物撮影は逆光で撮影・・・。
知っている内容もあれば、目からうろこの内容もある。
駆け出しのアマチュアカメラマンの俺にとってはこの写真教室はかなりレベルアップだ。





ぶれててもいい、露出がオーバーでも、アンダーでもいい。
運動会の写真、旅行の写真、『記録写真』じゃなく『記憶写真』になるものがいい。
『ブレてんじゃん!!』そんな写真でも、ほら、人とコミュニケーションがとれる。
いい記憶じゃないか。
そう中川氏が教えてくれた。





俺も写真の楽しみってソコだと思う。




それはそうと、組合の受付のお姉さん。急にモデル役になってもらった。
いや、それ仕込んでるでしょ・・・。
フツーの女子ならすんなりOK出さないと思うけどねぇ。結構可愛い服着てるし。
生徒さんの中でポートレート慣れているのは俺だけ。
みんな恥ずかしそうに写真を撮影している中で、べらべら喋って恥ずかしげも無く連射モードで、バリバリ撮影。その彼女の1年分くらいの写真を撮影した。
もちろん中川氏の教えに従い綺麗に撮影してやったぜっ。掲載は割愛させてもらうが・・。



中川氏にも「慣れてますね〜」と言われた。ええ・・まあ・・。


モデルに対しての接し方や、声かけの仕方も教えてもらった。
さすがにここら辺はプロじゃないと教えてもらえないよね。あとはどれだけやれるかだけど。






「あ〜、今日は天気が良くて暑いですねぇ。服、夏っぽくて可愛いですよ。レンズのここら辺に目線合わせてもらって、いいっすか〜?」

あの写真教室、一番の変人は俺であったに違いない。

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