蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

山行記 深入山 雪中行

登山を始めて早半年が経とうという頃。
時は『厳冬期』と言われる時期で、中国地方と言えど奥地の山々は雪に埋もれている。


今回の山行は『雪山登山』。
誰もが口をそろえて言う訳だ。『最高に面白い』と。
ただ職場の登山趣味人で雪山登山を経験した人はおらず、勤務形態が違うこともあってから誘うことも出来ず.
もともと一匹狼気質なので、あまりパーティーを組んでいく気も起きなかった。


平日の休み、やっぱり単独行だ。


されど、より雪山となると難易度が格段に上がる訳で、勇敢と無謀の紙一重を歩くことになるのは承知の上。
一通り情報を検索してみたところ、今の装備・実力的に行けそうな山はこの『深入山』だった。

この山は木々が生い茂っていない山で、登山口からずっと展望が開けており、登山口となる場所は『いこいの村』という宿泊温泉施設があったりと何かと便利な場所だ。
ガイドブックには雪山初心者向けという事もありこの厳冬期における深入山登頂を目指したわけだ。
普段のシーズンでは、アクセスや山頂からの展望の良さ、山頂までの標高差などから広島県では人気の山の一つだそうだ。
実のところ、15年前の学生時代の夏季合宿で登山した経験があったりする。
そんなこともあってかこの深入山をめざした。

登山口となっている『いこいの村』までの道は寒波から時期が経っていることや除雪されている事もあり道路に雪は積もっておらず、スムーズに到着することが出来た。
しかし、登山口からいきなり積雪状態。
もちろんアイゼンを装備して山頂を目指す。


山の斜面を見渡し山頂へのルートを考える。
そう、地理院地図に載っているルートは雪に埋もれて見えないのだ。
とはいっても踏み跡があるのでそれを辿っていく。
基本的な考え方では雪崩等に巻き込まれるリスクを回避するために出来るだけ尾根を歩き、谷を横断したり谷底を歩かない様にするのだ。

山を登る途中から登山口を臨む。来た場所が見えるので安心感がある。
途中、トレースのない尾根を歩いたので、足が雪に埋まりいわゆる『ツボ足』で歩く状態。
これが意外と体力を削ぎ落してくれる。足を高く上げないといけないので辛いのなんの。


それでも振り返って眺める風景は格別で、絶対に雪山を登らないと見れない景色が広がっている。

岩が露出したところで小休止。
看板に書かれていたコースタイムは40分とあったが、一歩一歩踏みしめて登るのでより時間がかかる。

この岩場が五合目くらいだろうか。
山頂は目前だ。
15年前の記憶だと緑が生い茂る山だったが、今目の前に見える山は真っ白だ。

山頂を目指して進む。
とても強い風が吹いてきた。木々が無いので遮るものが無い。
テレビでよく見るシーンの中に自分がいる。

ツボ足にはならないものの、しっかりと足を雪に食い込ませ一歩一歩登る。



山頂まであと300m。
ラストスパートだ。

で、山頂到着。きつかったーーー。どんだけきつかったかというと初めて右田ヶ岳に登山した時よりもきつかった。

山頂に到着した瞬間に喜びのあまり大声で叫びそうになったが、先に到着していたパーティーがいた為、ここは自粛。
おじさん二人に、同年代っぽい男の人が一人・・・、って友人のS君!!?
なんとまぁ、偶然の出会い!平日の山奥(しかも雪山)で偶然出会うとは!
そういえば登山が趣味だとは聞いていたが1年ぶりくらいの再会を果たした。
S君は俺が登山をやっていることを知らなかったようで、まさかの雪山で俺が登場してきたことにびっくりしていた。なんでも1年前から『周南山岳会』に所属しているそうで、軽く誘われたりした。
以前からHPの山行記録は見ていて、Sという名前がS君だったとは思いもよらなかったな。
たしかに、実力アップには山岳会に所属してみるのも悪くないかもしれない。

山頂での歓談のあと、S君と山岳会メンバーと別れ、一人山頂の景色を楽しんだ。

十方山、恐羅漢山、遠くは大山までが見渡せた。
曇ってはいたものの景色が楽しめて本当に良かった。

名残惜しいが、山頂を後にする。
ラッセルで吐きそうになるほどしんどかったし、正直目の前に広がる真っ白な世界に恐怖感もあったがその苦しみや恐怖を乗り越えて、山頂に到着した時の達成感は今まで以上だった。



普段の山行と比べ、圧倒的にきついし、もちろん危険性も伴っている。
無責任な一言になるかもしれないが、確実にこれは言える。
『雪山は最高に面白い』

ルート
地理院地図で確認すると登山道ではない。
既につけられていたトレースの状況を追うと尾根を直登するルートになった。
かなり地形を読みやすいので尾根を辿っていくとこのルートにおのずとなると思われる。
往路:1時間34分
復路:38分


初心者的考察
アイゼン、ゲイター、トレッキングポールは必須。
いこいの村ではスノーシュー、トレッキングポールの貸し出し(有料)もあったのでそちらで装備を借りても良いかもしれない。
10本爪軽アイゼンでの山行だったが、滑ってどうにもならないという状況にはならなかった。
しかし、ツボ足(ラッセル)になったりするとかなり体力を削がれるのでスノーシューのレンタルが良いかもしれない。(スノーシューに関して知識が無く、単に歩きにくそうという理由で採用していない。)
積雪量も1Mを越えず、雪山初心者にはうってつけの場所だろう。
何よりも視界が開けていることや、スタート地点が見えるので安心感は強い。
この日の気温は10度前後だったので特に気にすることは無かったが、状況では零下になるのは解りきっているので、防寒と防風対策はしていくべきだろう。
もちろん初心者なりに天候もGPV気象予報等を確認。
阿呆ほど冷え込まず、雨や雪の可能性が低いこともチェックポイントだった。
(あくまでも写真趣味で撮影が出来るかが結構重要だったりしている。)