ふなかたギャザリングを終え、一週間。
車から降ろしたばかりの荷物を積み込んで、走り出していた。
この日もまた山に入りキャンプだ。
2週連続。
今回は昨年も行った「とも人のまつり」だ。
今年は、風の祭で「とも人のまつり」の主催者に誘われて、遊びに行くことになった。
どちらにしても昨年、子供達と再びこのまつりで逢う約束をしていたので行くことにしていたのだが。
今年も昨年と同じ場所。
開場に到着すると、去年と変わりない風景が見える。
ああ、帰ってきたのだなぁと思ってしまう。
「まつり」と言うものに例年行っていると、行く先々でこの「帰ってきた」という想いをめぐらす。
昨年の風景や、昨年に出逢った人と1年ぶりの再会を果たすからだろうか。
さっそく、テントを設営する。
昨年は一人用のテントとこじんまりとした装備だったが、今年はいつものフル装備だ。
でも、テントを建てる場所は昨年と同じ。
隣の人が現れて、荷物の運搬やらテントの設営を手伝ってくれた。
なんか、この感じ大好きだなぁ。
隣近所で助け合うって、今在る現代社会では凄く希薄になっているんだよね。
でも、ここに、まつりに来ると皆助け合うんだよね。
丁度テントを建て終えた時、まつり開催の合図があった。
黙祷を捧げ、まつり会場の中心にある焚き火場に火が燈される。
まつりが始まった。参加者にどぶろくが振舞われる。
この「とも人のまつり」は先週行ったふなかたギャザリングとは違い、とても静かに流れる。
とりあえず、こちらもビールを注いで乾杯した。
シェラカップにビールを注ぐ。なんとも上品な飲み方か。
主催者の方、マッコイさん、龍太郎さん、あまらさん、子供達に挨拶を交わす。
昨年仲良くなった子供達も、しっかりと俺のことを覚えていてくれた。
「ファイヤーの人!!」
「だいちゃん!!29歳!!独身!!!」
歳まで覚えてくれていて、昨年より歳が1足されていたことには嬉しかった。
余計なことも覚えていてくれて何よりだ。
しかし、最近の女子はませているなぁ・・・。
と、29歳独身は想ふのであった。
天気も最高、ぼんやりお酒を飲んだり、馬鹿話をしたり、何にもせずにゆっくりと時間が過ぎる。
普段あくせく動いているので、なんだかそれだけでも贅沢だと想う。
ゆっくりと時間が過ぎる。
「時計」という縛りから開放されている今は、「何時」という概念より「どんな空の色か」「どんな空気が流れているか」と言う概念で判断する。
いまは、夜だ。
ジャズ・ブルース主体のステージ。
あまりにもの完成度の高さに、本当に入場料1000円でいいのかと目を疑った。
本当に良いステージだった。
そして、「回帰の時」。
全ての灯りが落とされ、本来の夜に「回帰」する。
そこには星と、月と、月明かりしかない。
この夜こそが、本来あるべき自然の夜なのだ。
満月になりきれていない月明かりでも、ほんのりと優しい灯りで会場を照らしている。
ネオンや街灯、街の雑踏の中にいる状況では感じられることが出来ない世界が、今、広がっている。
その月明かりが燈す闇に、マッコイさんのカリンバがボンゴの音と共に会場に鳴り響く。
とても静かで、穏やか。
静かに、静かに鳴り響く。
会場の中心。俺はステージの前に小さな炎を燈した。
いま、ここに回帰する。
偶然にも今年の8月にパサールでであったファイヤーパフォーマーのタカコさんと再会。
二人で出演となった。
いつもとは違う神秘的な演出と空間で、緩やかなパフォーマンスが出来た。
自分でやっていて、初めての経験だった。
完全に音楽に動かされていた。
それとも炎が音楽を動かしていたのか。
いつの間にかカリンバの音だけでなくドラムの音、シンバルの音、重厚になる。
どちらがどちらを制御しているのか分からない。
ただ、打ち合わせでは、尺は20分くらい。
カリンバの音とボンゴ(太鼓)の音。
後は全てにおいて即興。
それだけの打ち合わせ。
不思議と不安は無かった。
「後は、即興」
それだけでステージが出来る。
プロフェッショナルが奏でる音楽が俺という存在を引き上げてくれる感触。
なんだろう今までと空気が違う。
あっという間に、ステージが終わる。
摩訶不思議な「回帰の時」が終わり、一日目のお祭が幕を下ろした。
テントに帰って、ぼんやりしたままお酒を飲んだ。
今日の晩飯は鍋だ。
静かな夜の月明かりの下で、ワインを飲みながら熱々の鍋をつまむ。
今日も贅沢な夜が更ける。