歯車は廻る。
緩やかに加速する歯車は運命の流れを辿る。
狂る 狂る
狂る 狂る
先のアースディ瀬戸内で手に入れた虹の岬まつりのフライヤーを見つめていた。
風は暖かみを増し、新緑が芽生える頃。
相変わらず、慣れない仕事に翻弄され疲れきっていた。
自分は何の為に居るのか。
誰の為に何をやっているのか。
答えも出ない問題を一人、悪い頭で考えては疲れて眠る、そんな日常。
いままで、ほとんど休みの無かったゴールデンウィークがあっさり休みで、突如空虚に包まれる。
ふと、冷蔵庫に貼り付けていたフライヤーに目をやった。
「19th 虹の岬祭 5月1日〜5月5日」
今は、4月28日の昼過ぎ。
場所は熊本の阿蘇のミルクロードの通りにある牧場だそうだ。
知っている祭りの中で期間が長い。
どうせ行っても、知り合いなんかいないだろうしフライヤーを見ると知っているミュージシャンなんてほとんど居ない。
誘う相手もいないし、装備も一人用で誘えやしない。
・・・・・・何考えてんだ?
いままで、ずっと一人やったじゃないか。
初めて行った風の祭も一人だった。
でも、なんか溶け込んで楽しかった。友達も沢山出来た。
どうせこのまま此処にいても一人じゃないか。
意を決した。
装備・買出しを整え翌29日には飛び出していた。
貧弱な一人分の装備。
荷物を小さくまとめ、小さな車に乗っけて、行く先は虹の岬祭。
迷いは無かった。
走り出したから、もう戻れない旅だ。
下道を使い、広島から熊本へ。
熊本についた時には既にあたりは暗く、よく解らない状態だった。
定食屋で食事を取り、目的地を目指す。
手に入れたフライヤーと長年愛用するツーリングマップルを読みながら道を進む。残念なことにカーナビと言うものは俺の車には搭載されていない。
地図を見ながら、これが結構楽しいんだ。
しかし、見つからない。
外輪山をうろうろする。
むしろ、ここはどこだ。
恐らく、牧場のど真ん中。
外灯も何も無く真っ暗な世界。
お手上げだった。
うん、無駄に動くのをやめよう。
ガソリンも勿体無いし、こんな夜中のど田舎でガス欠は面白くない。
外輪山を下り、明るい通りに面した道の駅に車を止める。
夜中の12時を回っていた。
山間の盆地。4月も終わりと言うのにかなり冷え込んでいる。
今日はここまでにしよう。
シーツを取り出し、車中泊を試みる。
寒い。シートは硬く眠れない。でも静かだ。
初めての車中泊。
ふと、せっかくのゴールデンウィークに車中泊ってかなりアホだなと感じ、可笑しかった。だって「ゴールデン」だぜ。
こんなゴールデンを過ごしているのは俺くらいだ。
そう、想いながら浅い眠りに落ちた。
・・・目が覚める。
どちらかと言うと寝心地の悪さに目を開く、に近い。
空は、夜を終えようとしていた。
濃紺の空。
エンジンをかけ、霧が立ち込める市街地を走り出す。
外輪山ミルクロードの展望台に車を止めた。
目指すは、虹の岬。
夜には気付かなかった看板が俺を誘う。
到着。
新緑の草原に広がる夢の国。