『安い靴を買うほど裕福ではない。』
安い靴を次々と使いつぶして買い替えるより、少々高価な靴を買って修理して永く使う方が最終的に経済的であるという英国紳士の言葉なのだそうだ。
この時に初めてこのブーツを修理に出した。購入したのは修理に出した2年ほど前。と、いう事はすでに履き続けて10年を越えることになる。
ほぼこれ一本で過ごし、ここ数年真冬の寒い時期以外は履き続けた思入れ深い靴だ。
革製品がとても好きだったし、薄くて軽いスニーカーよりも武骨なブーツが性に合っていた。普段からジーンズを履くのでカジュアルな雰囲気のあるREDWINGの9111というブーツに一目ぼれして購入したのは今でも記憶に残っている。
付き合い始めの時の嫁さんと広島でデートしていた時に買ったものだ。
きちんとした本革で仕立てられたこの靴は、使い込む事で合皮で仕立てられた靴とは比べ物にならないくらいに色艶のある雰囲気に育って行った。
すでに3回ソールの張替を行っていて、もうそろそろソールの張替の時期を迎えていた。
買い替えるかリペアして使い続けるか・・・。
ソールの交換時期になる度に悩んでいたが、ソール以外にステッチや革そのものの痛みが酷くなり、今回を以って10年履き込んだこのブーツを退役させることにした。
しわくちゃになってしまったアッパー。もはやシワというよりもひび割れに近い深さ。
擦り切れてしまったタブ。
それでもREDWINGのロゴだけはしっかりと残っていた。
メンテは定期的にしていたものの、過酷な環境にさらされやすい靴にとっては10年はなかなかの酷使だったに違いない。
購入後すぐ、うっかりアッパーに付けてしまった傷も使い込んでいくうちに馴染んで目立たなくなっていた。
本革で仕立てられたレザーインソール。かかと部分に刻印されていたロゴも霞み、濃く深い飴色に染まっている。
レザーインソールは履く人の足に馴染む。
10年俺の足裏に張り付いて支えてきたレザーインソールは平面を失い、見事に俺の足型に馴染んで、足型を写し出していた。これも革靴の醍醐味だ。
永い間、お疲れ様。
見た目はまだまだいけそうだけど、踵とかに変な型がついてしまい足に当たって歩くときに足に違和感を覚えるようになってしまったというのが買い替えの決定打になった。
凄い名残惜しいんだけどなぁ。メーカーとか靴屋さんとかエイジングの見本で引き取ってくれないだろうか。
と、いうことで本日新しい靴を迎え入れた。
結局色々と見た挙句、REDWINGの8875をチョイス。
やっぱ本革のブーツだ。
何よりも9111と同じく、『グッドイヤーウェルト』という製法で作られているため、耐久性が高く、ソールの張替などメンテナンス性が良い靴だ。
もちろん永く使うつもりでいるし、永く使う前提の靴であるならばメンテナンス出来る余地が残されていたり、そもそも頑丈に作られている。
故にワゴンセールで売られている靴と比べると値段が高いのはある意味当然の結果だとも思える。
初めはこんな感じだったんだなぁ・・・。
フィット感は前後には余裕あり、左右はぴったり目。
使い込んでいくうちに各所が馴染んでいくだろう。
今の使用頻度で2年から3年のペースでソールを張り替え。
1回目のソールの張替の段階で足にしっかりと馴染んでいた。
言い換えれば、2年は使わないと完璧なフィットは得られない。
それが革製品の面白いところ。
使い込んで仕上げていこうと思う。
ikazuti-d.hatenablog.comikazuti-d.hatenablog.com
物質社会でなんでも使い捨てが出来る世の中で、わざわざ靴を修理している姿を疑問に思われたらこう答えようと思う。
『安い靴を買うほど裕福ではない。』と。