蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

ネットワーク

最近身の回りで起こった出来事で、自分の昔話を思い出した。




2009年頃に広島へ転勤になった時に、同郷で同じ出身校である会社の先輩と再会した。
学校生活では世代差があって全く面識はないものの、入社時に同郷という事で色々と面倒を見てくれた方だった。
当時再会した彼から、バーベキューパーティーをやるから来ないかと誘われ、アウトドア好きな俺は快く参加の承諾をした。
そのパーティーは想像以上に驚くほど盛大で、参加人数は100名を超え、食材も定温トラックが高級肉を運びこんでくるほどの規模だった。
一体何の集まりなのかを聞いたところ、その場では何であるかは濁された。
参加している人たちの世代、職業、人となりをつぶさに観察しても一貫性が無く、どのようにして出逢ってここにいるのか、このパーティーを指揮していると思われるリーダー格3名のバックグラウンドは何なのか、イマイチ手に取れず不思議な思いをしたのが第一印象だった。
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その後、彼とは何度か食事をし、仕事や他愛のない会話を重ね、入社当初より親密になってきた矢先のこと。
おもむろに『面白いビジネススタイルがあるから一度説明を聞いてみないか』と誘い込まれた。
専門家がいるのでひとまず話でもという事だったので、てっきりファミレスか何かで話を聞くのとばかりに想っていたが、誘い込まれたのは高層マンションの一室だった。
直感で怪しさ満点だったが、いかんせんこんな経験は初めてなので社会見学と、先輩の義理立てのつもりで一応は興味ありげに足を運んだ。


生活感のないマンション。明らかに居住用ではない。
その一室で30代後半くらいだろうか、あのパーティで指揮をしていたリーダー格と思しきとても身なりの綺麗なオネエサンに洗剤やら歯磨き粉やらの生活消耗品の説明をうけ、『ネットワークビジネス』という手法で売りさばくとかなりの利益になると強烈な勧誘を受けた。

自分も買えばポイントが付き、自分が勧誘してきた第三者が商品を買えばそのポイントも自分に付く。要はネズミ算式にピラミッドを構築するとやがて広がった裾の幅分、自分の儲けが増えるというシステムだ。
大した労力もせず、収入だけが増えるらしい。
『人間がもつ時間は限られている。多くの人はその時間をお金を稼ぐことに費やしている。あなたはやりたいことが沢山あるはず。こういう風に自由な時間を持って、楽しい人生を送りましょう。』


成功者がカタログされた分厚い本のページをつらつらと捲ってみると、大型クルーザーにおっぱいの大きな美女を乗せてお酒を呑んでいる姿や、海外の山々を巡り壮大な自然を背景に旅をする人など、実に胡散臭く、現実味のないセレブリティな面々が軒を連ねていた。
『カメラを片手に自由を謳歌しよう。アウトドアや旅が好きならばもってこいのビジネスだろう。』
『このビジネスをやっていると色々な人とネットワークが繋がる。広いネットワークを構築して持っているDAISUKE君にはもってこいじゃあないか?』
熱弁する先輩。

そして、リーダー格のお姉さんは間髪を入れず
『あなたはピラミッドの頂点。ピラミッドの下の人が頑張ったらこのうちだれが一番得をするかわかりますか?なりましょう!ネットワークビジネスディストリビューターに!!』
と鼻息荒くまくし立てる。

殺し文句だろう。実にキマっている。ええやん!
ネットワークと股を広げて、俺もあんなビックなおっぱいの美人とエンジョイしたい!
エス!でぃすとりびゅーたー!!


が、だ。

『儲かるのは俺よりも上の人間だ。もしかしたら貴女かもしれない。ちなみに伺いたいが、俺より上の人間を引きずりおろし、自分の下に付けるノウハウは無いのか?』

と口を滑らせたのは実にマズかった。




空気の流れと言うものに敏感な俺は、一瞬でその場の空気が冷たく重くそして暗い空気なってしまったのをまじまじと感じてしまった。
ゴメンナサイ。モウシマセン。オレノバカ。


宴もたけなわ、数種類のカタログと入会案内申込書を手土産にその場を後にした。
帰宅と共にゴミ箱にポイしたのは言うまでもない。
先輩に対する義理は果たしたと、緩やかに音信不通にさせて貰った。
ネットワークビジネスを謳いながら、俺とのネットワークはそこで絶ち切れたのだ。
むしろこいつはビジネスにならないと、切られた側かもしれない。きっつー。



そこそこ儲かるらしい。
家賃くらいにはなるらしいね。ピラミッド上層部はどうか知らんけど。

そして、なんか友達(みたいなの)がたくさん増えて人脈が広くなった『気がする』らしい。
パーティーやって100人規模の集まりに参加するから浮かれる奴は浮かれるだろう。



つい最近、出回った会社の通達で、
『社内でネットワークビジネスの勧誘をするカスどもに告ぐ。ロクな営業力のないクソ素人の貴様らがクソカタログに載っている様なクソセレブになれると思ってんのかボケ。そもそもあんなんサクラを使ってそれっぽく見せてるだけだノータリン。クソ素人が限られた自分の財力と時間を削ってどんなに頑張って素人営業しても、儲かってんのは上位のほんの一握りという事に気がつかんアホはいつまでも便所の底辺だウジムシがっ。ションベンでも垂れて寝てろ。カス!』
というようなニュアンスで書かれてあり、社内でも大概問題になっているんだなと想っていたら、その爆心地は件の先輩だったというオチ。
ディストリビューター(卸売業者)をやって卸していたのは結局、不信とトラブルだった。
きっつー。


お陰で、爆心地である本社の方ではバーベキューパーティーするやつは胡散臭い奴というレッテルが張られるらしい。
そりゃ、毎年入ってくる新入社員を狙って誘ってたら問題になるわ。
ただ単に金に目が眩んでしまった末路だと想う。
話に聞くとやればやるほどやり方が強引になってくるらしい。
この爆心地に花が咲かない事を願うばかりだ。


本当に大切なネットワークや人との繋がりなんてお金でどうこうできるもんじゃないのにね。
そのネットワークビジネスじゃそれ以上の広がりは得られない。
いや、それが価値あるネットワークで最高だと錯覚してしまうのか?
正直、そんなビジネスありきのネットワークよりも写真やファイヤーパフォーマンス、音楽の鳴り響く世界で出逢って繋がった純粋無垢な関係性の方に圧倒的な価値があったと想う。
(あくまで価値観の違いで、お前の人脈なんて金になんねぇだろと思われても一向に構いません。)



その後先輩がどのようになったかは不明ではあるが、今想えば実に有意義な社会見学であった。


あの時、俺より上の人間を引きずりおろし、自分の下に付けるノウハウをこっそり教えてくれていたら、今頃こんな日本の片田舎で貧乏生活をせずに、大型クルーザーにおっぱいの大きな美女を沢山乗せて世界を巡りお酒を呑んでいる姿をここに晒していたかもしれない。



・・・・ネットワークは広大だわ。