こちらの気配に気付いたのか、彼はこちらを見つめながらゆっくりと近づいてきた。
そして、ゆっくりと天を仰ぎ、口を開いてきた。
・・・・・。
ふと自分の後ろを振り向くと、そこには『カバの餌、一皿100円』の文字。
その一皿にブツ切りにされた人参が三切れ入っている。
いくら天候不良で野菜価格が高騰しているとはいえ、少しばかり高いんじゃない?
でもこの寒空の下、彼は何かを期待するように口を大きく開け、じーーっと待っている。
真冬の閑散期、平日の午前中。貸し切り状態の園内。
このまま彼とさよならするのは心無いので貯金箱に100円をいれて一皿分(人参三切れ)購入。
投げ入れた。
そして、ほんの少しばかりの食事を受け取った彼は静かに口を閉じた。
ああ、何この表情・・・・。
まるで祈るように味わうような・・・・。
カバの餌一皿100円。この思いプライスレス。