靴のかかとが磨り減った。
2年ほど毎日毎日履き続け、俺の歩き方が悪いのもあってか、結構限界まで靴底をすり減らしてしまった。
不精なゆえ、こまめに複数の靴を履き替えることもせず、酷使してしまったせいだ。
大分くたびれたが、購入当初と比べると『使い込んだ感』が出てきて、良い味になった。定期的に油を塗りこんでいたこともあってか雰囲気たっぷりだ。
靴は靴底がボロになったら捨てて取り替えていた。
『人は足元から』と言われるので、決して安くないものを購入しては、そんな感じでなかば使い捨て同然のルーチンを回していた。
今回もその運命を辿る予定だったのだが、どうしてもこの味の出た雰囲気を捨てたくはなかった。
そんな中、街でたまたま見かけた靴の修理屋さん。
有無を言わさず飛び込んで、靴底の修理を依頼した。
ものの見事に元通り。なかなか良い腕をしている。
しかもこの味のある色合いは新品では絶対に出せない。
まだまだいける。
修理して丁寧に使いこなすことで出てくる美しさ。
使い捨てでは手に入れる事が出来なかった一足が俺の手元に在る。
『人は足元から』、俺はこういう人間です。