ある一人のニンゲン。
与えられた仕事を与えられた時間にこなす。
システマッチックに過ぎるそんな毎日を過ごしていた。
きっとこれが普通なんだ。だって、周りの皆も同じだから。
そうじゃないと、飯を喰えない。
そうやって、自分と言う名の歯車を回していた。
周囲のニンゲンはパチンコに明け暮れて、変わった事といえば
「パチンコに○○万円勝った」だの
「スロットで○○万円負けた」だの。
システマチックに仕事をこなし、仕事が終わればシステマチックにパチンコへ通う。
システマチックに構成されたそのルーチンの中での刺激は「勝った、負けた」というシステム。
工場の周りに何故、パチンコ屋が多いのかを薄々感じ取れた。
狂っている。
『俺はそんなものに興味はないし満足できない』
心の中はその言葉が蠢いていた。目を閉じると、其処には何かが見えていた。
我に返り目を見開くと、其処には小汚い小さな田舎街に無数のパチンコ屋のネオンが煌びやかに輝いているだけだった。
カメラを片手にバイクに跨り、彼方此方を転々としながら色々なものを写真に納めてきた。
そんな姿を観た周囲のニンゲンは人を小馬鹿にしたように語りかける。
「そんな事をやって何の意味がある?本当にそれで楽しいのか?」
あるとき、ツーリングする際にいつも立ち寄るカフェのマスターから、一枚のチラシを貰う。
こちらのことをよく知るマスターは俺にその『扉』を示してきた。
そう、俺は、その扉を開いたんだ。
鼓動が高鳴った。
「ああ、これか。」
でも、俺は出来ない。俺はカメラマンだから。
そう思いながらも、次々と現れる扉を進んでいった。
各地で出会うファイヤーパフォーマー達。
あるとき、一人の青年と出会う。
とても身近にいながら、深く付き合う程度にならない関係を保ち、いずれは疎遠になり消えていく人間だった。
そんな彼と、ふと地域の夏祭りの会場で出逢った。
その時、水風船で遊んでいる彼の動きはジャグリングのポイの動きだった。
『そんなモンでポイをやるな。割れたら大変だろ』
『炎の世界を知る俺』『炎の世界を知りたい彼』
他の誰も共有できない事象を共有した瞬間だった。
そして俺は用意した。
かつてカフェのマスターが用意したような『扉』を。
それは自分自身に対する『扉』でもあった。