蒼天遊々な旅

LIFE IS TRAVEL

回顧録 Go North

北へ。


北へ。


進路をとる。



今日はとても天気が良いのでバイクに跨ることにした。


周南から須佐まで。
山口県の北と南をつなぐ道路の一つ、R315をただひたすら北へ北上するルートを選ぶ。



山の中に入ると、日中と言えど肌寒く、冬のにおいがする。


北へ。


北へ。


走り続ける。


到着した場所は日本海が見えるところ。


荒々しい波が岩にぶつかり弾ける。







断崖に立って海を見つめたんだ。









そんなツーリングの帰り道、R315にある急なヘアピンコーナーを曲がっていると、カーブの途中でバイクが事故を起こし転倒していた。ライダーは倒れており、近所のおじさんとおばさんが焦って電話をかけている。

とっさに俺は停車し、駆け寄った。

どうやらたった今、事故ったばかりのようだ。

ライダーに大きな外傷は無かったが、事故のショックか顔面蒼白でぐったりしていた。
さすがの俺も事故に直面するのは初めて。
あわてた俺は駆け寄って声をかけたが、事故を起こした彼は意識もはっきりしているし、痛いところは擦りむいたところと、わき腹が痛いという程度だった。
コーナーRが途中で変化する急カーブ。そこを曲がりきれず歩道の縁石に接触して吹っ飛んだそうだ。
とりあえず、バイク事故だ。
体をぶつけているのだから何かあってはまずいと横に寝かせ、救急車を待った。


横転したバイクを見ると、さすがに手酷くやられている。
そりゃそうだ。走行中に転倒したのだから、ボロボロになるのは当たり前。ステップもへし折れているし、恐らく純正から変えたであろうチタンマフラーもひん曲がっている。
とても自走出来る状態ではない。
「バイクどうしよう・・・・」

心配そうに彼がつぶやいた。
「どこから来たの?」
と問いかけると、
防府から・・・」
・・・俺と同じじゃねぇか。
「つーと、バイク買ったのはオートショップヨシオカか?」
ここらじゃ、ハーレーや国産車を扱う、腕の立つ有名なバイクショップだ。
「はい、そうです・・・」

あーあー、ここまで偶然が重なれば言うことも無い。

「俺も、防府だし、ヨシオカにはお世話になってるから、安心しな〜。直ぐに引き取りに来るように連絡しておいてやるから!」

そんなこんなでお世話することに。


無事、彼は病院へ搬送され、警察の調書も取って、事なきを得た。


警察と一緒に大破したバイクを起こし、道の横へ避ける。


Kawasaki Ninjya250 最近出たばかりの新型車。


地面と接触した側はボロボロ。でも廃車になるにはまだ早そう。
少し我慢してお金を出せば元に戻るだろう。
しかし彼は、再びバイクに乗るだろうか?


道路脇の誰も来ないバス停で、たった4000kmしか走っていないバイクが寂しそうにたたずんでいた。


「バイクがかわいそうだから、早めに迎えに来てあげてよ」

そう、お店に伝えた。




俺の乗るバイクはKawasaki ZZR400。
ZZRシリーズの後継機がこの新生Ninjyaシリーズだ。


なんとなく複雑な気分だった。
もしかすると、倒れていたのは俺だったかもしれない。
2年のブランクを経て返り咲き、もうすぐ半年経つ。
今日の出来事は俺にとっては何かの啓示だったのかもしれない。






バイク乗りが、バイクで事故って死ぬのはカッコいいと思うかい?
俺は思わないね。
そんなダセェ死に方出来るかよ。
生きて生きて乗り続ける。そんなバイク乗りのほうが、断然かっこいいと思うぜ。




漢(おとこ)KAWASAKI。
螺子が緩んで当たり前。
油が漏れて一人前。




漢KAWASAKI乗りの端くれとして、苦しむ同胞を見て、止まらざるは漢の恥。
轢かれた子供を見て見ぬふりする人間と同じにして貰っちゃあ、困りますぜ。




俺がバイクを乗る際にお守りにしている「ガーディアンベル」。
発祥はアメリカのバイク乗りからで、道に居る悪魔を追い払うという魔よけの鈴だ。
バイクのキーに取り付けている。

鈴に撒きつく龍が、悪魔に睨みをきかしている。